覆面調査について
マクドナルドのコーヒーに関する記事に続いて、コーヒーだけにホットな話題といえば、昨日、講談社発行の『おとなの週末』に掲載された「覆面調査」の結果に対して、カフェ・ベローチェが名誉毀損であると講談社を訴えた事件が報道された。
詳細についてはよくわからないが、どうもひとりのライターの個人的評価に基づいたランキング記事だったようで、今のところ講談社側も「あくまで主観的な評価。意見・論評の範囲」だと主張しているようだ。
しかし、そうなると『おとなの週末』で掲載されたその他のランキング記事もすべて眉唾物だと理解していいのだろうか?
まぁ、そんなことは善良なる購読者が判断すればいい話である。
市場調査を生業としている者として一言いっておかねばならないことは、「主観的な評価や論評」のことを決して「覆面調査」とはいわないということだ。
「覆面調査」†1とは、文字通り顧客や利用者になりすました調査員が調査していることを明かさずに、商品・サービスの品質、接客態度、店内外の様子、あるいは清掃状況などを評価し、お店や店員が気づかない部分を「顧客目線」で確認できる調査手法である。
ただ、「覆面調査」という調査の性格上、講談社とベローチェで起こったようなトラブルが発生する危険性を絶えずはらんでいる調査だともいえる。
というのも、いくら身分を隠しているといっても、調査という意識が影響して、どうしても日常的な目線よりも厳格な評価をしてしまうケースがあるからだ。
言い換えると、「ハロー効果」といわれる調査バイアスがきわめて生じやすい調査手法であるともいえ、調査結果の取り扱いには慎重にならざるを得ない。
また、調査バイアスを抑制するためにできる限り多くの調査サンプルを確保したくても、調査費用の関係で、あまり多くの調査員を動員できず、客観性に乏しい調査結果になる場合もありうる。
「覆面調査」は、いろんな意味でデリケートな調査なのである。
しかしそういったデメリットがあったとしても、「覆面調査」はとくに接客サービスの良し悪しが業績に大きく影響する業種・業態にとって、思わぬ発見や改善点が見出しやすいという意味で実施するメリットは非常に大きいのも事実だ。
講談社の記事の元となった「覆面調査」が、この調査の性格や内容をどこまで理解した上で実施されたのかはよくわからないが、われわれが「覆面調査」を実施する場合は、可能な限り調査結果に代表性や公正性が確保されるよう、綿密に調査設計を行なう。
とにかく、「覆面調査」は「個人的論評」や「粗探し」といった認識が世の中で定着してしまわないようにと祈るばかりである。
Notes
- ミステリーショッパーともいう ↩
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そうそう、わたしも今日テレビでそのニュース見て、講談社、おまいちょっと違うんでは?と思ってました。
見てて「ベローチェ、そうだったのか」としっかり刷り込まれたので、名誉毀損で訴えるのもわかる気がしたな。
テレビじゃ「言論の自由がなくなる」とか、えらそうに言うてたけど。
ネガティブに書いていい場合と、そうじゃない場合があることさえもわかってなかった講談社の「大人の週末」の編集レベルは、どう見ても大人じゃないですね。
ベローチェの評価、刷り込まれますよね。
それよりも、ベローチェのコーヒーって150円だったと記憶していたんですけど、知らないうちに170円に値上げしてたんですね。
そっちの方がショックです。