カルチャーショックな穀彩村
9/4(木)、香川県観音寺市から愛媛県松山市を経由して南下すること約2時間、その日のうちに宇和島市にやってきました。
九州の博多から宇和島市まで移動時間だけで実に8時間です。
夜、宇和島駅に着いたころにはヘロヘロでした。
愛媛県を訪れるのは生涯初で、これで四国4県すべてに足を踏み入れたことになります。
取り組みのある日吉小学校は、宇和島市から山の中を車でさらに1時間ほど行った鬼北町にあり、そこは典型的な中山間地域で・・・・実に遠かった。
9/5(金)、晴れのち雷雨。
鬼北町では、日吉小学校1~6年の児童73名が雑穀班、野菜班、コンニャク班、稲班、かんしょ班に分かれそれぞれ農業体験を行なっています。
雑穀類は日向谷「穀彩村」(ひゅうがい「こくさいむら」:以下「穀彩村」)の皆さん、稲作と野菜は地元の生産者の方たちや北宇和高校日吉分校の生徒さんの協力を得ています。
この日は、雑穀班の3年生によるトウキビの収穫と全校生徒を交えた試食会が行なわれました。
生産指導に当たっていただいている「穀彩村」と日吉小学校との交流は、2005年度から始まっており今回で3年目ということです。
トウキビの収穫は小学校から歩いて10分ほどの場所にある「ふれあい農場」で行ないます。
「ふれあい農場」は山の斜面を平らにしたような小高い場所にあり、入り口は結構急なスロープになっていて、その奥にも斜面の平らなところに田畑がありました。
以前うかがった徳島県つるぎ町の環境とダブります。
雑穀類は、6/18(水)にコキビ、アワ、モチキビの播種、7/8(火)にトウキビの苗の定植を行なったとのこと。
恥ずかしながらこちらにうかがう前に、「トウキビって何?モチキビって何?」ということでインターネットなどで調べまくりました。
トウキビ=とうもろこしのことなんですね・・・知りませんでした。
Wikipediaによると、とうもろこしは地域でいろいろと呼び名があるらしく、なかなかとうもろこしも奥が深いなぁと。
しかも、すでに和歌山県紀の川市さんでスイートコーンに出会っているので、スイートコーン=とうもろこしという公式が頭の中でできあがってしまい、いろいろとカルチャーショックな鬼北町でした。
一方、「モチキビ」については「穀彩村」代表の渡辺さんから話を聞くまで、まったく謎の存在でした。
「穀彩村」で栽培されているモチキビは、渡辺さんの表現をお借りすると「黒い(赤紫色の)トウキビ」ということで、こちらの地域でごくわずかながら生産されていたものを、数年前から引き継いで栽培されているということでした。
生育するモチキビの背丈はトウキビの半分ほどしかなく、実自体も少し小ぶりらしいです。
モチキビの実は粘り気が強く†1、お餅やパンなどに配合することできれいな紫色に着色することができるともおっしゃっていました。
当初、日吉小学校の担任の先生と電話で話しているときに、「『こくさいむら』の方たちに協力を得て・・・」と聞いていて、「?・・・国際村?どこの国の方たちが?」と妄想していました。
しかし、すぐに「穀・彩・村」と教えていただきインターナショナルではないと理解できたのですが、「なぜ『穀・彩』なのか?」という疑問がずーっと頭の中を渦巻いていました。
直接確認していませんけども、その疑問も、この「モチキビ」の赤紫の彩りが答えだったのかもしれません。
前置きが長くなりました。
「ふれいあい農場」ではまず「穀彩村」の石本さんから収穫方法について「できるだけ実の先が太いのを選んで、それぞれ4本収穫してください」と説明があり、「穀彩村」の皆さんの指導の元、収穫が始まりました。
子どもたちは、「穀彩村」の皆さんのあとに続きトウキビ畑に入って行きます。
約3aほどの「ふれいあい農場」一面に2m以上にまで生長したトウキビの合間から、見え隠れする黄色い帽子。
子どもたちはうっそうと生い茂ったトウキビ畑の中で、「どれが大きいですか?」とか、「どれを採ったらいいですか?」と「穀彩村」の方たちに確認しながら、より大きなものを選んで収穫していました。
この日は午後から曇天でしかも湿気が相当高かったせいもあり、トウキビ畑の中にほんの数十分間作業しただけで子どもたちも汗をびっしょりかいていました。
収穫も終わり、続いて小学校校庭で試食会の準備です。
児童たちは、収穫してきたトウキビの皮を一心不乱に剥き始めました。
トウキビの皮を剥いてみると、いろいろな発見があったようです。
ある児童は、白いイモムシが実を食べてしまっているのを発見して、渡辺さんに「イモムシが食べているけど大丈夫ですか?」との質問に対して、渡辺さんは、「イモムシはおじちゃんが取ってやる。イモムシが食べるくらいやからこのトウキビは美味しいんだよ」と説明されていました。
また別の子どもが「これは大丈夫ですか?」と他とは少し違うトウキビを持って渡辺さんのところにやってきます。
そのトウキビは実の一粒が変色していて、渡辺さんは「あー、これはモチキビが交配したんだ」と解説され、「交配って?」という新たな疑問に、「隣のモチキビの花粉が風で飛んできて、トウキビの雌しべにくっついてこうなったんだ」とさらに解説。
自然環境を教材とした教育ファームならではの発見やら不思議がいろいろあって楽しいですね。
100本近くあったトウキビの皮もほとんど剥き終わり、今度は炭火で焼いて食べることに。
トウキビの皮を剥くときに、トウキビの軸を少し残しておくと、そこを持ってひっくり返したり、そこを持って食べたりするのに便利です。
トウキビは、少し焦げ目が付くくらいじっくり炙り焼きにする方が美味しいということで、炙っている最中、「ポン!ポン!」と実がはじけたりします。
そう、これはまさしくポップコーンです。
校庭にトウキビの芳ばしい風味が漂い、焼き上がったトウキビをみんなでかぶりつきます。
先ほど、スイートコーンとのカルチャーショックと書きました、それはトウキビを食べてみたときに感じたことです。
完全に頭の中ではトウキビ=とうもろこし=スイートコーンになっていたので、ひとくちかじってみて、「あれ?硬いし、甘くない!?」と驚きました。
日ごろ私たちが食べているとうもろこしのほとんどは、おそらく品種改良されたスイートコーンなのですね?
トウキビとスイートコーンは見た目は似てても味は別物に思えました。
実はやや硬いので、よく噛まないとなりません。
噛めば噛むほどほのかにとうもろこしらしい甘みを感じますが、ただただ素朴な味わいで芳ばしさを食べているといった方がいいかもしれません。
「あぁ~、とうもろこし本来の味ってこんなのだ」と噛みしめながら、1本食べ終わるころには満腹感が。
しかし、いつの間にか試食会に参加していた高学年の児童の中には、2本、3本と食べる子がいたりして、日吉小学校の子どもたちにたくましさを感じたりしました。
また、石本さんから「トウキビは直接かぶりつくんじゃなくって、手で粒をもいでから口に運ぶんだ」とみんな怒られました。
直接かぶりつくのはスイートコーンの食べ方らしいです。
食べ方まで違うとは・・・・。
しかしながら、子どもたちにとって、この素朴なトウキビが「故郷の味」って感じられることになるんでしょうね。
今回の取り組みの締め括りとして「まとめの会」が開かれました。
代表の児童から「穀彩村」の方たち一人ひとりが紹介され、児童たちから今日の「とうきびのしゅうかくとししょく会」について感想が述べられました。
・買ったものよりも、採れたてを焼いて食べた方が美味しいと思った
・焼きとうもろこしを初めて食べたので、もう一回食べてみたい
・自分で焼いたことがなかったので、うれしかった
・普段、焼きとうもろこしを食べないので、家でも食べたいと思った
・毎年この行事が楽しみで、今年も食べることができてよかった
など、そんな子どもたちの感想を聞いて、「穀彩村」の方たちも本当にうれしそうな表情をされていました。
そして、突然の雷雨に襲われた「まとめの会」は足早に閉会しました。
雨が弱まるのを待っている間に、渡辺さんからこれまでの「穀彩村」の活動についてや、今後の取り組みについてうかがったりしながら、3年間続いている日吉小学校との交流に関して、次のようにもおっしゃっていました。
子どもたちに農業体験をさせることは、保護者の人たちも喜んでいるようです。
特に、子どもたちが学校でやってきたことを話したりしてくるので、家庭で会話が増えたと。
私たちは、これからも続けられるだけ続けて行きたいと思っているんです。
「モチベーションの交換サイクル」とも呼ぶべきこういう見えない関係性が、教育ファームを継続させる本当の原動力なんだろうなと思いました。
蛇足ですが、試食会の最中、数名の児童たちが自主的に「穀彩村」の方たちにお礼を言ったり、次回は何をするのか質問したり、立っていたメンバーの方にイスを持ってきたりしている場面を目にしました。
そのとき、「君は、○○さんところの××くんか?」、「△△くんは、□□さんの面影があるわ」と子どもたちに話しかけられていましたが、いわゆるムラ社会のコミュニティでは匿名性は希薄で、まだまだ濃密な人間関係が残っているのだなと。
生活環境としては決して恵まれていない中山間地域ではありますが、何気ない風景にどこか「豊かさ」を感じました。
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