脱穀・籾すり・精米は「総合学習」?
10/1(水)、秋晴れ。
前回の記事の最後で少し触れましたが、田んぼの稲穂がどうやってお店で売っているお米の状態になるのか知るために、今日は、9/24(水)に刈り取って干していた稲を使って、脱穀・籾すり・精米のプロセスを静原小学校の子どもたちは学びました。
脱穀から精米をするのに、古い農具や身近な素材、そして「秘密兵器」などを使いました。
ご指導いただいたのは、近畿農政局の伊藤さんと東山さんです。
伊藤さんは、ここ静原小学校の取り組みで何度かお会いしているのですが、さすがに専門家。
農作物についての知識が豊富で、何も知らない私にも嫌な顔ひとつせずいつもいろいろと教えてくださいます。
農作物だけではなく、教育ファームをはじめ食育に関することなど、一方ならぬ情熱の語り口は、ほんとに熱いぜ!伊藤さん!
さて、今回の体験学習に持ち込まれた農機具は、足踏み式脱穀機、千歯こきなど古い農具のほか、ペットボトルで作ったお手製の脱穀装置、籾すり用のすり鉢とソフトボール、小型精米機などなど。
そして、伊藤さんご自慢の秘密兵器が、お米の品質試験用に使われていた小型の電動籾すり装置です。
この装置は、籾すりと唐箕(とうみ)の機能が一体になっていて、籾すりの様子が見えるように、ローラーの部分がスケルトン仕様になっているというもの。
さっそく実習開始で、まずは脱穀過程から。
脱穀には昔の農具である足踏み式脱穀機と千歯こきを使いました。
先生にサポートしてもらいながら、子どもたち自らペダルを踏むんですが、どうしてもドラム部分の回転が逆回転になったり、稲穂の抵抗で回転が止まってしまったりと思うように脱穀できません。
伊藤さんが、「機械の方にリズムを合わせてやるんよ」とアドバイス。
悪戦苦闘しながらも、徐々にコツをつかんだ子どもたちは汗をかきながらペダルを踏んでいました。
足踏み脱穀機で取りきれなかった分は千歯こきですいて取っていましたけども、ちょっと作業が地味で子どもたちにはあまり人気がなかったように思います。
一方で、意外に子どもたちの心を掴んだのが、ペットボトルに穴を開けて作ったすごくシンプルな脱穀装置。
側面の大きな窓口から小さな穴†1に稲穂を通し、一気に引き抜くと「ブチブチブチ!」と音を立てて籾がペットボトルの中に落ちる仕組みです。
女の子たちはその何ともいえない感触に、「これハマるわ!」と楽しげでした。
脱穀の次は籾すりです。
ここで秘密兵器の小型電動籾すり装置が満を持して登場。
脱穀した籾を装置の上部にあるホッパー(籾を入れる漏斗状の部分)に入れると、回転するローラーの部分に落ち、そこで籾殻が剥ぎ取られ玄米とに分かれます。
その後、自然に落下していく籾殻と玄米は、装置に内蔵されたファンの送風によって分別されるという仕組み。
出てきた玄米を見て、子どもたちは「わぁ~!お米や!」とびっくり。
伊藤さんと子どもたちのやり取りが続きます。
伊藤さん:なぜこのローラーの部分で籾殻がむけるかわかりますか?
子どもたち:・・・・?
(ここで伊藤さんはすかさず、すり鉢とソフトボールを持ち出す)
伊藤さん:すり鉢の中で籾をソフトボールでゴリゴリすると、籾殻と玄米に分かれます。これは、すり鉢が止まっていてソフトボールだけが動いているからで、もし同じようにどちらも動くと籾殻はむけません。つまり、ローラーの部分もこれと同じで、実は下のローラーは上のローラーよりも回転速度が少し遅いんです。
子どもたち:おぉ~!
伊藤さん:そしてここから息を吹きかけると、籾殻が飛んでいくのですり鉢の中には玄米だけが残ります。この機械はそれを1台でやってくれているということです。
子どもたち:おぉ~!
伊藤さんの原理説明自体を理解して驚いたかといえばちょっと疑問ですが、とにかく目の前のすり鉢の中で起こったことが子どもたちにとってはまるで手品を見ているかのようなサプライズ。
驚いている子どもたちの様子をみながら、いかに目の前で実演することが大切かということを知り得たように思います。
最後に、籾すりをした玄米を小型の精米機に投入。
出てくる精米を見た子どもが、「わぁ~、お砂糖みたい!」とつぶやきます。
ここで伊藤さんが玄米と精米を出して子どもたちに質問をしました。
伊藤さん:玄米と精米、何が違いますか?
子どもたち:色が違う!
(ここで伊藤さんが精米機から白い粉を取り出して)
伊藤さん:色が違うのは、玄米の表面についていたこの糠が取れたからです。
子どもたち:おぉ~!
伊藤さん:他に違いはないですか?
子どもたち:ん・・・・?
伊藤さん:じゃー、白い方のお米を触ってみてください。
子どもたち:わっ!温かい!?
伊藤さん:そう、精米したてのお米はほのかに温かいんです。じゃー、なぜ温かいのでしょうか?
子どもたち:・・・・?・・・・ま・さ・つ?
伊藤さん:そう!正解!精米するには、お米とお米をこすり合わせて糠を取ります。
伊藤さんは子ども2人を指名し、子ども2人を抱きかかえるようにして、「こうやってギュッギュッって、押しくらまんじゅうのようにしたら、体が温まるよね?それと一緒です」と説明。
その様子に子どもたちも嬉々としていました。
脱穀から精米までの一連の実習が終わったのち、子どもたちから質問や感想が出されました。
感想としては、「お米を食べるのにはすごく時間がかかることがわかった」、「足踏み式脱穀機の踏むタイミングが難しかった」、「摩擦で精米することを初めて知った」など。
一方、高学年の児童からの質問でおもしろかったのは、「江戸時代はどうやってお米を食べていたのか?」というもの。
それに対して伊藤さんは、「想像ですが、当時の一般の人たちは白いお米ではなく粟や稗(ヒエ)という雑穀類を主に食べていたか、お米を食べていたとしても玄米で食べていたと思います。白いお米は一部の特権階級が食べていたんじゃないかな」と回答。
ここで疑問なのは、なぜ「江戸時代」だったのか?
その理由は、ちょうど今、高学年は授業で江戸時代を勉強しているからだそうで、昔の道具を使いながら精米までの一連のプロセスを体感してみて、そういう疑問が沸々と湧いてきたようです。
今回の実習は、「体育」(足踏み式脱穀機)、「物理」(摩擦)、そして「歴史」など、いくつもの教科の要素が詰まっていたように思います。
その意味で本日の実習は、文字通り「総合学習」といえるかもしれませんね。
Notes
- 伊藤さん曰く「直径2mmがベスト」 ↩
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